貧乳解消という言葉に、今日だけ立ち止まった理由

朝、カーテン越しの光がやけに白くて、まだ完全に目が覚めきらないまま洗面所の前に立った。
パジャマのまま、歯ブラシをくわえて、何気なく鏡を見る。寝癖と、少しむくんだ顔と、そして相変わらず主張の少ない胸元。
いつもなら、そこで何も考えない。考えないようにしてきた、の方が正しいかもしれない。
でも今日は違った。
たぶん、昨日の夜にたまたま目にした「貧乳解消」という言葉が、頭のどこかに残っていたから。
解消、ってなんだろう。問題みたいに扱われるものなんだろうか。
そんなことを考えながら、私は無意識に背中を丸めて、肩をすぼめていた。
エレベーターの鏡に映った、無意識の姿勢
出勤前、マンションのエレベーターに一人で乗った。
壁一面が鏡になっていて、朝の私はだいたいそこを見ないようにしている。
でも今日は、なぜか目が合ってしまった。
肩が内側に入って、胸を隠すみたいな立ち方。
誰に見せるわけでもないのに、誰かの視線を避けるような姿勢。
「あ、私、こんな立ち方してたんだ」と、ちょっとだけ驚いた。
貧乳が気になる、というより、
貧乳である自分を、先に自分が否定してる、そんな感じがした。
正直な本音を言うと、
「別に誰も見てないのに、なんでこんなに縮こまってるんだろう」
って、少し情けなくなった。
職場でふと浮かんだ、誰にも言わない比較
午前中のミーティング。
対面の席に座った同僚が、姿勢よく座っていて、ジャケットのラインがきれいに出ていた。
胸が大きいとか小さいとか、たぶん本人は何も意識してないと思う。
でも私は、
「どうせ私はこういう服、似合わないし」
って、一瞬で思ってしまった。
これ、声に出したことは一度もない。
自分の中だけで、瞬時に完結する小さな比較。
そして、そのたびに自分の存在を少しだけ小さく扱う癖。
わかる…って思う人、たぶんいると思う。
比べたいわけじゃないのに、勝手に比べて、勝手に傷つくあの感じ。
「解消したい」の正体が、少しだけ見えた瞬間
昼休み、デスクでおにぎりを食べながら、ぼーっと考えていた。
貧乳解消って、何を解消したいんだろう。
サイズ?
見た目?
それとも、それを理由に自信を引っ込めてしまう自分の態度?
今日の私は、胸そのものより、
「どうせ私なんて」と先に引く思考に、疲れていた気がする。
解消したいのは、体じゃなくて、
体を理由に行動を制限してきた癖なのかもしれない。
帰り道で試した、ほんの小さな行動
仕事終わり、駅までの道。
人通りも多くて、相変わらず私は無意識に肩をすぼめて歩いていた。
そこで、思い出した朝のエレベーターの鏡。
ほんの気まぐれで、背筋を伸ばしてみた。
胸を張る、というより、背中を起こす感じ。
正直、何も変わらない。
胸が急に大きくなるわけでもないし、世界が優しくなるわけでもない。
でも、不思議と呼吸が少し楽になった。
歩幅も、ほんの数センチ広がった気がした。
今日気づいた、ちょっとした違和感

貧乳解消って言葉、
ずっと「足りないものを足す」意味だと思ってた。
でも今日一日を振り返ってみて思う。
私の場合は、「削ってきたものを戻す」ことなのかもしれない。
姿勢。
発言のタイミング。
服を選ぶときの諦め。
胸が小さいから、じゃなくて、
胸が小さいと思っている自分が、先に引いていただけ。
ポジティブな話にはしたくない。
明日また、同じように縮こまるかもしれないし、
鏡を見るのが嫌になる日も、たぶん来る。
でも、今日だけは知ってしまった。
小さくしていたのは、体じゃなくて、態度だったかもしれないって。
もし、あなたも同じように感じたことがあるなら
誰にも言えないけど、
下着売り場で早足になるとか、
試着室で無意識に服を戻すとか、
「似合わない」と決めつけるあの瞬間。
それ、あなただけじゃない。
解消しなきゃいけない欠点、みたいに扱われるけど、
本当は、もっと静かで、個人的な問題なのかもしれない。
今日はただ、背筋を伸ばしただけ。
それだけで何かが解決したわけじゃない。
でも、
自分を小さく扱ってきた癖に、少しだけ気づけた日として、
今日は記憶に残りそうだ。
この違和感、明日も覚えていられるかな。
それともまた、忘れてしまうのかな。





